« 子宮の中へと還れ | トップページ | 65億の楽器 »

2008年1月15日

もうひとつのまんが道 - 人生キャバキャバ



鈴木は気を許すとすぐに「まんが道」の話をしだす悪癖があるのだが、今夜は森安氏について語りたい。

森安なおや ─ まんが道フリークの間ではキャバと呼ばれ愛されている人物である。トキワ荘には最初に手塚先生がいて、藤子不二雄がそれを語り、石森章太郎&赤塚不二雄が登場し、テラさんこと寺田ヒロオはリーダーとしてモッくん主演で映画にもなった。そして名脇役キャバ…Wikipediaではこう紹介されている。



森安なおや(もりやす なおや:1934年11月9日 - 1999年5月21日)は、日本の漫画家。漢字で書くと「森安直哉」。本名、森安直(ただし)。岡山県岡山市出身。

【人物】
1950年代を中心に活動。漫画少年等の雑誌や貸本屋向けの書き下ろし単行本などの仕事が多い。藤子不二雄Aの『まんが道』でも登場し、トキワ荘でのいささか奇妙な暮らし振りが語り草となった人物で知られる。トキワ荘時代からの漫画家仲間からは「何故か憎めない」と愛されていた人物であった。森安の描く作品は寡作ではあったが、叙情に溢れ、愛らしく繊細なタッチで再評価されつつある。
果実商の四男として生まれたが、幼い頃に母親と死別し、継母に育てられた。高校生の頃に「山陽新聞中学生版」に4コマが掲載されデビュー。連載される。上京し漫画家の田河水泡の内弟子となる。同期の弟子に山根赤鬼・山根青鬼・滝田ゆう・藤田道郎(ドラマまんが道プロデューサー)鉄道研究家の三好好三など。師匠のつてもあり少年クラブにコマ漫画を掲載。
独立後、池袋のアパートに住み、1954年に知人から寺田ヒロオを紹介され藤子不二雄・坂本三郎・永田竹丸等と共に『新漫画党』を結成。合作やカット、短編を『漫画少年』を中心に発表する。漫画少年廃刊後の30年頃からはきんらん社・唱和漫画出版等の出版社が発行する貸本屋向けの書き下ろし単行本を数多く手がける。その後、複数の作者が掲載される貸本短編誌『星』『二十五時』等にも作品を掲載。
1960年頃からは、貸本業界の衰退もあり就職をする。昭和40年代には雑誌COMでの競作企画『トキワ荘物語』で久しぶりに作品を発表。この頃には妻子と別居、そして離婚する。職を転々としながらも、その合間にはライフワークともいえる太平洋戦争時代の少年の成長をテーマにした長編『18才3ヶ月の雲』を20年掛けて執筆していたが、未完に終わった。亡くなる直前には、故郷岡山を舞台にした『烏城物語』が地元同級生有志の協力で出版される。東京都立川市の自宅で急性心不全のため逝去。享年64才。

【エピソード】
●漫画を描き始めた頃は「下書きをしてからペン入れ」という作法を知らず、いきなりペン入れをしていた。そのための修正のホワイトがかさ張り、ポロポロと落ちたという。
●藤子不二雄両人が悪戯で蝋製のピーナッツを与えたところ、美味そうに食べてしまった。
●藤子不二雄Aのトキワ荘時代の日記によると、同室の鈴木が鍵をかけて寝たため自室に森安が来訪。就寝中に森安が『苦しい!』と騒ぎ出したので話を聞くと『腹が減って苦しい!』と言い出して一晩中(近所のパン屋が開くまで)苦しんだ由。
●『まんが道』で「キャバキャバ」と奇妙な笑いの人物として描かれているが、この「キャバキャバ」は本来、当時のトキワ荘仲間で流行った造語(「やれやれ」「どうにもならない」という意味)として使われていた言葉である。他に「ピーマンバイ」など。
●1981年のNHK特集『現代マンガ家立志伝』で、漫画家として大成したトキワ荘メンバーが、取り壊しが決定したトキワ荘で25年ぶりの「同荘会」を開くという内容の番組が放送されたが、出世した他のメンバーを差し置いて、転職を繰り返しながら漫画家として再起をかける森安の姿に、メンバーの中で最も長く放送時間が費やされた(事実上、同番組の主人公的な立場だった)。バーで番組スタッフから「今でもやれば負けない?」と聞かれると「25年のハンディは絶対取り返せないよ」と答えた。また「僕が本当に番外だから、僕が居るとコントラストで彼らの出世ぶりが目立つ訳ですよ」と笑いを交えて語っていた。
●鈴木伸一や永田竹丸らは、森安の才能にいち早く気が付いていた。そして彼らいわく、森安は「おおらかさとせせこましさが同居した様な」「豪快ではあったが繊細な」人物だったという。仲間内では一見賑やかなムードメーカーであったが、その中で絶えず周囲の反応を窺っていた様に見えたという。
●遅筆でかつ「気が乗れば描き、乗らなければ描かない」、というスタイルであった。当時の講談社の編集者である丸山昭によると、困っているというので情けで何度仕事を依頼しても、森安は断り続けていた。しかし丸山が森安と顔を合わせる度、森安は「すみませんすみません」と言って逃げ回っていたという。

http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%A3%AE%E5%AE%89%E3%81%AA%E3%81%8A%E3%82%84&oldid=14931551



>また「僕が本当に番外だから、僕が居るとコントラストで彼らの出世ぶりが目立つ訳ですよ」と笑いを交えて語っていた。

ああもうキャバ!そりゃあ、カメラの前じゃはキャバキャバと笑うしかないよなあ。

キャバについての詳しいエピソードはまんが道を読んでもらえばわかるし、未読の方はこちらのサイトが秀逸なキャバ研究をなされているので、これを読んでいただければ森安氏の(すっごく迷惑な)人となりがおおよそ理解して頂けることと思う。キャバキャバ。

【Book】手塚治虫他 / トキワ荘青春物語【Book】手塚治虫他 / トキワ荘青春物語
販売元:HMV Yahoo!店
HMV Yahoo!店で詳細を確認する

蝸牛社発行の「トキワ荘青春物語」はトキワ荘について多くのことを語っていた藤子氏や赤塚氏など日なたの人たちだけではなく、断筆したテラさんや、途中で新漫画党を脱退した永田竹丸氏などがトキワ荘の暗部について触れている珠玉の資料である。この「トキワ荘青春物語」には森安氏の描いたトキワ荘物語も掲載されていて、キャバファンとしてはマストアイテムといえるだろう。


これがその表紙。ま、思いっきりそっちゃうんだけどね。

まずは前口上でござい。

上京シーン。やはり級友にまで迷惑がられている。釈月性の「壁に題す」を詠うのはまんが道へのあてこすりか?

「のらくろ」の田河水泡先生の弟子になった。しかし先生は扱いに困ったらしい。

テラさんと知り合い、新漫画党結成だっ!

有名な深川二畳アンコが出ちゃうエピソード。

牛乳を押し売りされて怒る藤子氏たち。

テラさんの好意でトキワ荘に入居するも同室のラーメン小池さんに迷惑かけっぱなし。

ヤバイ。干された。

さらばトキワ荘!テラさんに未払いの家賃を押しつけて逐電。

テラさん大激怒。新漫画党除名へ。

テラさんめっちゃ怒ってる。

「おれはあんなにやすくはないぞっ」そうだそうだっ。


……内容についてはここではなにもいうまい。テラさんの逆鱗に触れ、トキワ荘を追い出された森安氏のその後の消息は本人自筆のプロフィールとして同文庫に記されている。


一九五四(昭和二九)年一九歳、少年時代は終わり、出版社の隆盛没落と共に党員の勧めで、「トキワ荘」に入る。猫も杓子も、世の中正義の漫画大流行、一人背を向け、貸本屋向きの「きんらん社」で少女漫画一点張りに進み、天才永島慎二の詩の世界に魅かれ、武蔵野の林、桜台に移る。以後詩心は開花せず。職業転々流転、現在漂白中。


その後の森安氏は前述したWikipediaの記述通り、妻子と別居、職業を転々としながら東京都立川市の自宅で急性心不全のため逝去した。享年64才だった。

そして同「トキワ荘青春物語」には森安氏によるコラムと詩が掲載されている。トキワ荘時代の楽しかった思い出に触れ、仲間の藤子氏や石森氏の仕事ぶりに負けたくない思いを綴り、怠惰な自分を笑い、そして最後はこう締めくくられている。

消えてなくなれトキワ荘……。

「アリとキリギリス」の寓話はやっぱりトキワ荘でもキリギリスの没落で終わった。時代の波には乗れず、目の前の苦労からは逃げ、まわりに迷惑ばかりかけたハミ出し者。そしてどんどん出世していく仲間たちを日陰から眺めた敗北者。

ねえ森安氏、でも鈴木は森安氏のまんがすごく面白いと思うよ。鈴木が担当の編集者だったら原稿書かなかったらもちろん怒っただろうけれどさ。でも鈴木もすぐ楽に逃げちゃうし、すごく自分勝手な人間で森安氏みたいなところある。だから森安氏のことが気にかかるし結末を思うととてもビターだ。才能の世界で勝負するって残酷なことだ。いや世の中すべて残酷でシビアだけれどもね。ま、鈴木もせいぜいがんばるよ。でも落ちぶれてダメになって生きるってのも、それはそれで風情があっていいかも知れない。生き様としては嫌いじゃないぜ。愛情深い女に食わしてもらったりして。…って、それって今のおれじゃん!まだダメにはなってないけどさ。ま、やるだけやってみる。

自分を笑うことができる人間ならばどんな境遇に落ちてもきっとだいじょうぶさ。人生キャバキャバ!だ。


Hoshiwokande_2


【再掲】もうひとつのまんが道 - 人生キャバキャバ(初出2007年9月19日)

|

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/168456/9890137

この記事へのトラックバック一覧です: もうひとつのまんが道 - 人生キャバキャバ:

コメント

コメントを書く




コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。